置換ベンゼンの反応


 前回はベンゼンの反応について見てきたが、今回はベンゼンに置換基がついていたらどうなるかを見ていこう。

 ベンゼンに置換基がつくことによって①反応性はどう変わるか? ②どの位置で反応するか?(配向性)の二点について考えてみよう。

①反応性
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 図1のようにベンゼンに置換基Rがついているものを考える。Rが電子求引基だとベンゼン環のπ電子は減少するため求電子置換反応は起きにくくなり反応はおそくなる。(電子求引基の例:ハロゲン、c=o、CF3、CN、SO2OH)一方、Rが電子供与基だとベンゼン環のπ電子は増加し反応は速くなる。(電子は供与基の例:N、O、アルキル基、フェニル基)

②配向性について


f:id:shikinu:20180607111800j:image図2
f:id:shikinu:20180607112104j:image図3

 ベンゼン環に電子供与基がついている場合、図2のようにオルト・パラ配向性を示す。(オルト位よりパラ位のほうが多いのはパラ位のほうが立体障害が小さいためである。)一方ベンゼン環に電子求引基がついている場合、図3のようにメタ配向性を示す。このように違いが生じるのは一体なぜなのだろうか。その答えは共鳴構造式を書くことで理解できる。


f:id:shikinu:20180607112252j:image図4

 図4のようにオルト、パラ、メタそれぞれについて共鳴構造式が書ける。ここで注目したいのは印をつけた構造、つまりC+に直接置換基Rがついているものである。このような構造はオルト位とパラ位で置換した場合のみに見られ、メタ位で置換したときには見られない構造である。

 Rが電子供与性ならばC+に電子が流れ込み安定化する。これによってオルト位、パラ位での反応が起こりやすくなり、オルト・パラ配向となる。Rが電子求引性のときはC+からさらに電子を吸い上げることになり不安定化する。これによってオルト位、パラ位での反応が起こりにくくなり、相対的にメタ位での反応が有利になる。これがメタ配向の原因である。

 ・例外
f:id:shikinu:20180607112717j:image図5

置換基Rがハロゲンの場合、ハロゲンは電子求引基であるが、オルト・パラ配向性を示す。例えばFは電気陰性度が高いため、ベンゼン環のCから電子を求引する性質がある。これを誘起効果という。一方Fには非共有電子対があり、図5のように共鳴により電子を供与する性質がある。これを共鳴効果という。一般に共鳴効果>誘起効果であるので、FはC+に電子を供与しオルト・パラ配向となる。