ベンゼンの求電子置換反応

 今回はベンゼンの求電子置換反応について見てみよう。

 
f:id:shikinu:20180607114346j:image図1


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図2
 ベンゼンの求電子置換反応は図1のように進行する。まずベンゼンのπ電子が求電子剤E+にアタックし、Eが付加する。次にX-がEと同じCについているHを引き抜きHが脱離する。ここで注意したいのは、図2のようには反応しないということだ。ベンゼン環は芳香族性をもっており安定な構造であるのにわざわざ芳香族性を失うようには反応は進まないのである。付加→脱離という過程を経ることが芳香族性を失わずに置換されることのポイントなのである。


f:id:shikinu:20180607120124j:image図3

 ここで具体例としてハロゲン化を見てみよう。ベンゼンにCl2と触媒として鉄(FeCl3)を加えると図3のようになる。ここでのポイントはCl2を加えたならば触媒はFeCl3(FeBr3はダメ)を加えるということだ。この反応の反応機構を見てみよう。


f:id:shikinu:20180607121100j:image図4


f:id:shikinu:20180607121600j:image図5

Cl2と触媒のFeCl3が図4のように反応し図4の生成物ができる。この生成物がCl+(求電子剤)のような役割をはたす。そして図5のように反応は進行しベンゼンはハロゲン化される。

 

 次に求電子置換反応の代表的な反応Friedel-Crafts反応について見てみよう。Friedel-Crafts反応にはFriedel-Craftsアルキル化とFriedel-Craftsアシル化の2種類がある。まずはFriedel-Craftsアルキル化から見ていこう。

 
f:id:shikinu:20180607123243j:image図6


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図7

 Friedel-Craftsアルキル化はベンゼンに塩化アルキルと触媒としてアルミニウム(AlCl3)を加えると図6のようにベンゼンがアルキル化される。反応機構を見てみよう。図7のように塩化アルキルと触媒が反応しカルボカチオンが生成する。このカルボカチオンが求電子剤となりベンゼンと求電子置換反応して図6の生成物が得られる。

  Friedel-Craftsアルキル化の問題点としてはカルボカチオンによる求電子置換反応であるために直鎖アルキル(エチル以外)で置換することができない点がある。一般にカルボカチオンの安定性は第一級>第二級>第三級であるために塩化アルキルと触媒が反応して第一級カルボカチオンが生成したとしても第二級カルボカチオンに転移してしまい第一級カルボカチオンとベンゼンを反応させることが困難なのである。

 

 では、直鎖アルキルベンゼンをつくるにはどうしたらよいのだろうか。ここで用いるのがFriedel-Craftsアシル化反応(図8)である。図9のように酸塩化物(塩化アシル)と触媒(AlCl3)が反応するとアシリウムイオンが生成するがアシリウムイオンは転移をしない。これによって直鎖アルキルベンゼンを生成することができるのである。


f:id:shikinu:20180607131154j:image図8


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図9